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風水で快適生活

第四回 節分
文/戸矢 学

鬼が去って、春が来る?
 

「節分」は、「鬼追いの豆撒き」とは無関係、と言ったら驚きますか?

本来の意味は「立春の前日」のことで、つまり「明日から春になる日」ということです。なんと、良い日でしょう!

これは文字どおり「季ける」という意味で、だから立夏、立秋、立冬の前日も節分です。もっとも今では他の節分にはとくに行事はありません。やはり「春が来る!」というのは、全国的に特別なことなのですね。

そして一般に「節分行事」と思われているものは、「追儺(ついな)」のことです。
追儺とは「鬼追い」という意味で、「儺」だけで「おにやらい」とも読みます。元々は中国の古い宮廷行事で、平安時代には陰陽師が重要な役を果たす朝廷行事の一つでした。

平安神宮では、2月3日に節分行事がおこなわれますが、とくに平安時代の追儺を再現した、古式の「大儺之儀」は見ものです。他では、まず見ることができません。

朝堂院に設けた斎場の四隅に四色(四神)の垂を掛けて結界とし、そこで儀式はおこなわれます(※詳しくは平安神宮のHPを参照してください)。

大ヒット漫画『陰陽師』では、愛すべき副主人公の源博雅が方相氏(ほうそうし)となって、黄金の四つ目の面を被っていましたが、まさにそのままに「鬼やらう!」と発声します。

続けて、上卿が桃の木の弓で、葦の矢を射て邪気を祓います。「」と「」は、お祓いの呪力を持つとされている植物です。これが節分行事の原型「追儺」ですが、──さて「豆撒き」は、どうしたのでしょう?

ところで節分行事は、本来は大晦日の大祓(おおはらえ)におこなわれる行事なのですが、西暦に替わったときに、2月の立春の節分行事として定着しました。

ところが実は、旧暦では今年は2月9日が元旦で、その前日こそが大晦日になります。また、立春は2月4日です。つまり実際の大祓のほうがむしろ早すぎて(年末に終了)、節分こそは本来どおりの正しいタイミングということですね。

立春のための年越し日である節分と、年越しの祓え行事としての追儺が、つごうよく融合したものが現在の節分なのです。

 
朱塗りと白木、どっちが正しい?
 

ところで平安神宮は、なぜあんなふうに真っ赤っかなのか、不思議に思ったことはありませんか?

私は小学校の修学旅行で初めて訪れたのですが、広い境内に立って茫然としたのを今でも憶えています。あまりにも鮮やかで、まるで別世界でした。

その後、宇佐神宮(大分)や厳島神社(広島)などを訪ねる機会があって、神社にはいわゆる「朱塗りのやしろ」というものもあるのだと知りましたが、ちょっと意外でした。子供の私の印象では、出雲大社や伊勢の神宮に代表されるように、神社は「白木造り」だと思っていたからです。

でも、実は「朱塗り」の出所は風水なのです。

平安神宮のような建築を、古い言葉で「丹楹粉壁(たんえいふんぺき)」と形容します。これは「赤い柱に、白い壁、蒼い瓦」を意味するもので、「黒檀の玉座」と合わせて風水の四神相応を体現しています。宮殿や大社大寺の多くが、この思想で造られました。

平安神宮は、平安遷都1100年記念に造られたものですが、かつての平安宮殿を約8分の5のサイズでそっくりそのまま再現したものです。

でも、それなら、どうして現在の京都御所は朱塗りではないのでしょう?

元々の宮殿そっくりの平安神宮と、後世に造られて今も残る京都御所とは、まったく似ていません。あでやかな丹楹粉壁の神宮に対して、御所は檜皮(ひわだ)葺きの格調高い白木造りです。

もうお分かりかもしれませんが、大陸渡来の風水建築は「塗装文化」で、わが国発祥の和風建築は「白木文化」なのです。その理由は、まず材木の違いがあります。大陸は(欧米も)広葉樹が建築資材なので、表面のざらつきをカバーするために塗料を塗ります。しかし日本は針葉樹なので、その必要がありません。

また、風土の違いも大きな要素です。大陸では湿度対策は不要ですが、名にしおう京都・奈良の盆地気候は何よりもそれが最優先になります。おそらく、平安時代は空調設備もなかったので、気候風土に合わせることができずに諦めたということでしょう。

 
豆で邪気を祓う?
 

さて、節分といえば「鬼は外 福は内」という掛け声が付きものですが、一般家庭ではもうあまり聞かなくなりました。

しかし幼稚園では、サンタクロースと双璧のようで、まだまだ「鬼」の人気も捨てたものではありません。子供は豆撒きに興味津々のようで、自分の家でそのイベントがおこなわれないのは不満のようです。

でも、豆撒きには「縁側」が必要です! 昔懐かしい縁側こそは、家の内側と外側の境目で、ここが死守すべき豆撒きの“闘争ライン”だったのです!

鬼は庭の暗がりに逃げ込んで、それに較べて居間のなんと明るいこと! 2月は最も寒い季節なのに、縁側の内側はとても暖かいような気がしていたのを今でも記憶しています。

白木の「縁側」「濡れ縁」は、日本家屋の象徴でもあります。日本で独自に発展した建築様式の寝殿造りや書院造りには、縁側が付きものです。縁側のある一戸建てに、またいつか家族で住みたいと願っているのは私だけではないでしょう。

ところで鬼の由来は、このコラムの第2回で触れましたが、鬼がなぜ「豆」に弱いのか?

豆は神道では“呪物”で、古来、魔を祓う力があるとされています。追儺の桃の弓や葦の矢の代わりに、簡単な豆撒きを採用したというところでしょう。

その豆にも色々種類があります。なにしろ“五色豆”というくらいで、風水食品の原点です。

黄豆 黄豆──大豆のことで、「畑の肉」とも言われるほどにタンパク質が豊富な“豆の王”です。豆腐、納豆、きなこ、などなど、これほど日本人の食生活に深く関わっている食物は他にないでしょう。
赤豆 赤豆──小豆は、餡や赤飯に。
緑豆、白豆、黒豆 緑豆、白豆、黒豆は、どれも総菜や菓子でもお馴染みで、しかも栄養満点です。

さあ、まめに豆を食べて、まめまめしく(健康に)暮らしましょう!

(第4回 了)
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