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風水で快適生活

第九回 門松
文/戸矢 学

正月の「しるし」は松と竹
 
「としの初めのためしとて〜」という歌は、日本人であれば、たぶん誰でも知っているでしょう。
その歌詞は、こう続きます。
「終わりなき世のめでたさを
松竹(まつたけ)たてて門(かど)ごとに
祝(いお)う今日こそ楽しけれ」
新年は、松や竹を門の脇に立てて祝福する、という意味ですね。
つまりそれが「門松(かどまつ)」です。
東京では、これから年末になると、銀行がシャッターを下ろした後の一角などに、注連縄(しめなわ)や注連飾り(しめかざり)を売る店がオープンします。年末の風物詩ですね。
ここでも、簡単な門松を売りますが、一戸建て住宅の門の左右に立てられる本格的なものは、鳶職や植木屋によってオーダーメイドされます。3本の青竹を松の枝で包むデザインが基本ですが、好みでこれにいろいろな飾りを付けたりします。
元々は「松飾り」といって松だけでしたが(平安時代)、後年に(鎌倉時代)竹が加わったとされます。
しかし本来は、常緑樹であればとくにこだわる必要はありません。
門松の意味は、年神(歳徳神)をお迎えするための「依り代(よりしろ)」なのです。
つまり、神が降りてきて、憑依(ひょうい)するところ、という訳ですね。
神棚に榊(さかき)を供えるのと、意味は同じ。新しい年には、その年の神様が寿ぎ(ことほぎ)に訪れて、7日までとどまります。
この7日間を「松の内」と呼びます。門松の松にちなんだものです。
 
「初日の出」が真東から
 
常緑樹のことを、かつては常盤木・常葉木(ときわぎ)と呼んでいました。
つまり、「常に葉が茂っている木」ということですね。
その代表が松や竹ということになります。
神棚には榊(サカキ)が供えられますが、これももちろん常緑樹です。
榊という字は、木偏に「神」と書くくらいですから、最も神聖な樹木ということで古くから尊ばれていたのであろうことがよくわかります。
すでに『古事記』にも登場していて、天の岩戸開きでも、特に「根こそぎのさかき」として、根の着いたまま左右に飾られます。
榊は、とくに葉の表面につやがあって照るところから「照葉樹(しょうようじゅ)」と呼ばれるものの一つですが、他にも椿(ツバキ)楠(クスノキ)などが仲間です。神棚にそなえるのは榊が原則ですが、椿や楠でもだいじょうぶ。
ちなみに照葉樹は、温暖で、雨量の多い地域に繁茂するもので、日本列島では熊本・宮崎・四国・南畿・南房総に集中し、この地域は「照葉樹林帯」と呼ばれます。
ここは、太古より人々が密集してきた地域であって、日本文化の育まれた風土であるとされています。春分・秋分の時の日の出が「真東」になる地帯です。
ちなみに、陰陽道(日本風水)では、「立春」から新年になるので、この地域の初日の出は、まさに“真東”から昇るという訳です。(2006年は2月4日が立春)
 
明けまして、おめでとう!
 
マンションなどの集合住宅では、管理組合によって正面玄関に門松が立てられます。
だいぶ前から東京では、これが慣習になっているようです。
しかしそれとは別に、それぞれの部屋のドアにも「注連飾り」か「簡易門松」を着けたいですね。
そのプロトタイプが、年末はあちこちで手に入りますが、これも「松の枝」がベースになっています。
でも、もしもあなたが、松の枝(50cmくらいの先端)を二本手に入れることができるならば、自分で作ってみることをすすめます。
細い縄を輪にしてその枝にネックレスのように掛け(「茅の輪=ちのわ」という)、縄からは小さな四垂(しで)──カミナリ形の和紙──を四本下げる、それで完成です。
これが一組あれば、門松と同じ役割を果たします。
これは「簡易タイプ」ですが、一戸建ての左右の門柱に下げれば「門松」になりますし、マンションのドアには一つ下げれば「松飾り」です。
ちなみに、元日は「元旦(がんたん)」とも言いますが、「元旦」とは、元(はじめ)の旦、旦は、「日」が水平線「_」に昇った様を表しています。
つまり、一月一日の朝、初日の出の時をいう言葉なのです。そして初日は、新年の神様そのものとされて、ご来光に拝礼する、という訳です。
新年を言祝ぐ(ことほぐ)=祝う言葉が、「明けまして、おめでとう!」というのは、「今年も新年の神様をお迎えして、よかったね」という意味なのです。
年神は初日の出とともにがやってきて、あなたの家の門松に依り坐して(よりまして)、7日までとどまります。だから新年は、毎年、門松で迎えるのです。
 

『一月一日 としのはじめ』

作詞:千家尊福
作曲:上 真行

一、
年の始めの例(ためし)とて
終わりなき世のめでたさを
松竹(まつたけ)たてて門(かど)ごとに
祝(いお)う今日こそ楽しけれ

二、
初日の光差し出でて
四方(よも)に輝く今朝の空
君が御影(みかげ)に比(たぐ)えつつ
仰ぎ見るこそ尊けれ

※千家尊福(せんげ たかとみ)
出雲大社宮司。男爵・貴族院議員・各県の知事等を歴任し、第一次西園寺内閣の司法大臣となる。政界だけでなく、東京鉄道会社社長等財界でも活躍した。大正7年(1918)歿、74才。

(第9回 了)
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