| 大名屋敷が森になった?! |
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都会でマンション生活をしていると、ひときわ“緑”が恋しくなります。
それでも東京は意外に緑の多い街で、皇居と明治神宮が双璧です。
他にも新宿御苑や六義園(りくぎえん)、小石川後楽園など、数万坪規模の大きな庭園が点在している環境は、世界の大都市の中でも類例のないものでしょう。
これらの庭園のほとんどは元は大名の屋敷跡なのですが、その後も保存されてメンテナンスが行き届いた結果、いまや立派な“森”になっています。
おかげで、東京人は格好のリフレッシュ・エリアを得ることができたというわけです。
休日ともなれば、どこの庭園も散策する人たちで賑わっていますが、ニューヨークだとセントラルパークだけが果たしている役割を、東京はいくつもの庭園が複合的に担(にな)っています。
大名屋敷は、その主なものは江戸時代初期に設けられたものですが、選定は専属の陰陽師に委託されました。その結果、有力大名の上屋敷は「龍穴」もしくはその周辺となっています。大地のエネルギーの吹き出し口ですね。
だから、そのエリアは、散歩するだけで、良い気をふんだんに浴びることができます。 |
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| 「森」の由来 |
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大名屋敷というのは、各藩の藩邸の上屋敷・下屋敷であったものを言いますが、石高の大きい藩はそれに比例して屋敷も大きいのは当然です。
とくに「雄藩」といわれる大大名は、競って「気」のすぐれた土地を確保したので、屋敷跡を観れば当時の力関係がよくわかります。
もちろん、現在の皇居である江戸城を屋敷にしていた徳川家がダントツのパワーであることは言うまでもありません。
都内の庭園では皇居と明治神宮が双璧と先に述べましたが、実は成り立ちはまるで違います。
皇居は太田道灌が選定して以来、約550年(1457年に築城)もの間、大事に育まれてきた庭園です。
とくに戦後は、昭和天皇のご意志により、あえて人手を加えず、自然のままにゆだねたことから“原始返り”して、ひときわ神威の強い森となっています。
これに対して明治神宮は、実は完全な人工の森です。
造成の開始から今年で86年目になりますが、さながら太古の原生林を想わせる様子になっていて、こちらはサポートする人たちの努力のたまものです。
いずれにしても東京の真ん中にあるとは信じられないほどの素晴らしい森で、新緑の季節ともなれば、陽光と相俟って、訪う人たちの心身を甦生(そせい)させることでしょう。 |
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| 春の到来を告げる緑の芽吹き |
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家庭でも、環境が許せば、ぜひ樹木を植えたいものです。
「木」は「気」であって、五行(木火土金水)の第一です。
これを大切にすることで、良い循環がおこなわれます。
もちろん家庭で“森”を造るのは不可能と思いますが、一戸建てで少しでも「庭」と呼べる土のスペースがあるならば、ぜひ若木を植えてください。
その家に暮らしながら、年々大きく成長して行く樹木の姿を目にすることは、大地のエネルギーを受けることです。
日本には、子どもが生まれると、その年に「その子の木」として若木を庭に植える、という習慣が古くからあります。
会津地方や北関東では、娘であれば桐(キリ)か欅(ケヤキ)を植えて、その子が結婚する際にその木で箪笥を造って嫁入り道具の一つとして持たせてやる、という古くからのならわしがあります。
幼い頃から共に成長してきた樹木を、新たに形を変えて永く身近で親しめるようにという意味もあるでしょう。
産土(うぶすな)の地の養分を吸収し、陽光を浴び、雨に洗われて育った樹木は、まさにその地の「気」を体現しています。
しかも子どもの成長を見守るという役目を担うことで、その木には土地の精霊(スピリッツ)が宿ります。
だから、婚礼家具は外材で造られたものでは本来の意味がないということなのです。
どうぞ、ぜひとも生まれ育った土地の木材か、せめて国産の木材で造られたものを選んでください。 |
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| 緑樹が呼び込む清浄な「気」 |
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家の庭に緑樹があると、季節がめぐって、青葉や若葉が陽光に輝くのを目にするだけでも気持ちを和らげます。
また、雨が降っても青葉を濡らす様を眺めれば、きっと「雨も良いもの」と思えるはずです。
日本家屋はその様子に親しむことができるように造られてきました。
たとえば「垣根(かきね)」。
土塀や築地塀(ついじべい)は城郭や武家屋敷などの「戦闘」を意識した建築から発生したものですが、それよりはるかに古い成り立ちのものに垣根があります。
「♪垣根の垣根の曲がり角♪」
という唱歌がありましたが、あの垣根です。
「垣」の「根」というくらいですから、根を張った植物を垣とすることだろうと想像がつくでしょう。
切り出した木材や竹材で造られたものもいつの間にか垣根と言うようになっていますが、正しくは「根」があるものを言います。
とくに根のある樹木を植えて垣根にしたものを「生け垣」と言います。
生きて成長を続ける樹木は、悪気や凶気を跳ね返す力があるとされています。
たとえば墓地の隣に家があっても、高さ2メートルほどの生け垣をその境に設けると、庭に良い気が保たれます。古くからの生活の心得です。
また生け垣で囲まれた家・土地は、一種の結界になって、家内安全を保ちます。
生け垣の良さを最近の日本人は忘れかけていますが、近年では「生け垣条例」を制定して奨励している市町村も増えてきました(小布施市、新宮市など)。 |
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| 照葉樹の力 |
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生け垣に良いとされる植物は、楠(クスノキ)、椿(ツバキ)、榊(サカキ)、正木(マサキ)など。
これらは照葉樹とも分類される植物で、文字通り葉の表面が照るようにつやつやしている常緑樹のことです。
日本では温暖で多雨な地方に自生しており、古代からその一帯は人々の生活域になっていました。
今では山は人工植林した杉ばかりになってしまいましたが、かろうじて宮崎県や四国、紀伊半島、南房総などに残っています。
ちなみに、神社の鎮守の森は、本来は照葉樹林です。
生け垣は、鎮守の森の親戚筋だと思えばわかりやすいかもしれません。
緑なす里山の風景は、日本の原風景ですが、これも照葉樹林が母胎になっています。
アニメ映画『隣のトトロ』は狭山丘陵の里山が舞台になっているそうですが、サツキとメイの家のすぐそばにたたずむ巨木──トトロの木──は、まさに家の守りになっています
あれも、クスノキです。
宮崎駿監督は、巨樹巨木がお好きなようで、その作品にはしばしば登場しますが、「ラピュタの巨樹」もクスノキで、「もののけの森」は照葉樹林だろうと思われます。日本の原風景を象徴的に描くには、それが不可欠ということです。
あなたの家にも緑樹を配置して、青葉若葉を眺めながら、日本の原風景をしのんでみてはいかがですか?
(第10回 了)
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